気配を重ね、静かに溶け合う即興音楽──LOLOETがファースト・アルバム『環響音』で描く音の風景

和田彩花、吉澤幸男、劔樹人、チャンケン、Hamachi
アンビエント、ダブ、ポストパンクなど、さまざまなジャンルの枠を越えながら独自の世界観を作り上げる5人組バンド、LOLOET(ろろえ)。静けさの中に身を置いたメンバーそれぞれの音が重なり合い、ひとつの風景が立ち現れていく。LOLOETの音楽は、個性をぶつけ合うのではなく、互いの輪郭を尊重しながら響きを積み重ねていく営みだ。その音の風景は、静かに、しかし確かに広がり続けている。
本インタビューでは、バンド結成時のメンバー集めの経緯から楽曲制作のプロセス、アルバム・タイトルでありバンドのテーマである「環響音」に込めた思想までを、メンバー全員参加で語ってもらった。さらに、LOLOETの中心人物、和田彩花が日本語ではなくフランス語で詞を書く理由や、そうした表現方法によって示そうとしている意味や意義についても掘り下げていく。
静かに重なり、波紋のように広がる音の世界
LOLOETのファースト・アルバム『環響音』
INTERVIEW : LOLOET

2019年にアイドル・グループを卒業後、和田彩花はソロ・アーティストとして活動を続けてきた。2022年にはフランスのパリに留学。2023年9月に帰国すると、盟友・劔樹人(Ba.)らと新バンド「LOLOET」を結成する。
LOLOETは実験音楽や現代美術に対する和田の長年の愛着をようやく形にしたグループでもある。初のアルバム『環響音』には即興演奏のパートも多く、アンビエントとインディー・ポップとダブを横断するオルタナティヴな音楽性が繰り広げられている。
注目のグループ、LOLOETはどこに向かおうとしているのだろうか。和田と劔に加え、吉澤幸男(Gt.)、Hamachi(Dr.)、チャンケン(Trp./Syn.)という5人に話を聞いた。
取材・文 : 大石始
撮影 : 廣田達也
「ぶつけ合う」のではなく「積み重ねる」個性
――バンドの構想は和田さんのフランス留学中からあったのでしょうか。
和田彩花(Vo.)(以下、和田):そうですね。アイドルを辞めたあと、別の会社に所属しながらソロのバンドをやってたんですね。そこでやってたバンドは割とオルタナポップみたいな感じだったので、もうちょっと実験的なことをやりたくなったんです。そんな話をしていたら、劔さんが「もうひとつ、バンドを作ったらどう?」って言ってくれて。そういうことができるメンバーを劔さんが探してくれたんです。
――留学のタイミングで実験的なことをやりたくなったというのは、パリで実験音楽や即興音楽のライヴに触れたことも大きかったのでしょうか。
和田:実はもともとアイドルをやっているころから実験音楽をやりたかったんです。でも、その手段がなくて。それがLOLOETでようやく形になった感じなんですよ。
ただ、もちろんパリの空気を吸って自分自身が解放された感じはありましたし、やりたいことが明確にもなりました。私は古典芸術も好きなのでオペラも見るんですけど、パリでフレッド・フリスさんのライヴを二回観る機会があって。
――おお、フレッド・フリスですか(注釈:イギリス出身の音楽家。ヘンリー・カウやアート・ベアーズ、マサカーの活動でも知られる)。
和田:個性をぶつけ合いながら音を奏でる人たちを見て、よりそちら方面に突き進んでいった感覚はありましたね。

――和田さんがアイドル時代から好きだった実験音楽とは、どのようなものだったのでしょうか。
和田:オノ・ヨーコさんの作品が一番好きですね。大学の先生からいろいろ見せてもらうなかでジョン・ケージとも出会って、自分がやっているアイドルの音楽とは違う世界あるんだということに気づいたし、そういう表現をやりたいと思うようになりました。
――オノ・ヨーコは音楽家であると同時に、フルクサスの前衛芸術家でもあるわけで、和田さんにとってはそういう意味でもロール・モデルになっている?
和田:めちゃくちゃロール・モデルです。オノ・ヨーコさんの考え方自体すごく好きで、彼女の本もいっぱい読んで吸収しました。オノ・ヨーコさんは美術家としても素晴らしいですし、今もずっと彼女の活動に関心があるんですよ。
劔樹人(Ba.)(以下、劔):彼女がまだグループ・アイドルにいたころ、深夜にアートを紹介するラジオ番組をやってたんです。その番組でヤン・イェリネックとかをかけてたんですよ。レコードのノイズだけをずっとループしてる曲があるんですけど、それをかけてて(笑)。この人は結局こういうものが好きなんだなということは当時から感じていました。
――最初の時点でおふたりはどのようなバンドの形を想定していたのでしょうか。
劔:ソロのバンドも曲はすごくよかったし、自信のあるものだったんですよ。でも、有名なアイドル・グループ出身という出自があるせいか、あまり気軽にイヴェントには呼ばれなくて。だったら「和田彩花っていう名前を前面に出さずにやったほうがいいんじゃないか」という話はした記憶がありますね。
和田:あと、劔さんはその時点で「この子、いいんだよね」と言ってたのがハマちゃん(Hamachi)で。ハマちゃんが石を叩いてる動画がインスタに上がってて、それを見て「この子を絶対バンドに入れたい」って言ってたんですよ。
劔:そうそう、石を叩いてたんですよ(笑)。
和田:それを見て私も「おー、いいじゃん!」って(笑)。それで誘うことにしました。
――いきなり連絡が来たわけですよね。Hamachiさんはどう思われましたか。
Hamachi(Dr.):もともと劔さんがやってるバンドのことを知ってたんですけど、メッセージいただいて、わーって感じ(笑)。嬉しかったですね。
劔:あと、自分のなかでは吉澤(幸男)くんと一緒にやりたいという思いもありました。彼女がソロのバンドをやっているころから、僕が作った曲を吉澤くんに見てもらってたんですよね。だから、吉澤くんに入ってもらうのは自然な流れでしたね。
吉澤幸男(Gt.):劔さんとは20歳ぐらいからの友達で、ずっと一緒にバンドをやってみたいなと思ってました。少し手伝っていたソロもおもしろかったし。
和田:だから、曲調とか方向性はまだ見えていないうちから謎にメンバー集めが始まってたんです。メンバー集めのほうが先のような印象があります。
劔:僕、そういうことやっちゃうのかもしれない(笑)。形から入るというか。

――メンバーとしては、チャンケンさんが最後だったわけですよね。
劔:そうですね。昔からトランペットの入ったバンドをやってみたくて。そうしたら共通の知人から「アンビエントを作ってるトランペッターがいる」っていう話を聞いて、それだ!となりました。
――僕の勉強不足なのかもしれないですけど、チャンケンさんはThe SKAMOTTSみたいなスカ・バンドのイメージがあったので、「アンビエントを作ってる」というのはちょっと意外でした。
チャンケン(Trp./Syn.):僕もこんなことになるとは思っていなかった(笑)。コロナ禍で音楽の仕事が全部なくなって、暇になってしまったんですよね。それでシンセサイザーを買ってみて、いじって遊んでたんですよ。そのことを知った知人から「とあるバンドがトランペットを吹けてシンセサイザーも使える人を探してる」と言われて。
――そう考えると、この5人というのはかなり絶妙なバランスで成り立ってる感じがしますね。
劔:そうですね。 バンドって流動的に始まることが多くて、やってみないとわからない部分が多いんですよね。このバンドに関しては最初からピシッといきましたね。性格の相性もちょうどよくて。
和田:みんな静かだけど、演奏が始まるとこの静かさがちょっとずつ音に変わっていって、積み重なっていく。個性をぶつけ合うというより、ひとりずつの個性を積み重ねていって、ひとつの世界観ができあがっていくんです。その感じがめちゃめちゃよくて。





















































































