ソロがあるこそヘルシンキのサウンドはよりソリッドに

──では4曲目“Setagaya”について。
橋本:ギター、ベース、ドラムをループで流しながら作っていて、その時に弾いたマリンバのシンセがいい感じだったので、そのまま活かしました。人の気配が少ないクローズな世界観で、バンドでみんなで作り上げるより自己完結のほうが合っていたと思います。
──マリンバのメロディーがとても印象的ですよね。
橋本:この曲はEPの中でも初期にできたもので、世田谷美術館や砧公園で過ごしているときに「もっとセンス・オブ・ワンダーを大事にしたい」と思ったんです。その時の空気の温度や匂いを閉じ込めるように、ギターのラインを弾きました。
──橋本さんにとっての「世田谷」はどういう風景ですか?
橋本:以前は下北沢が世田谷のイメージだったんですが、用賀や砧公園方面に行くと「ここも世田谷なんだ」と思うようになって。下北はもはや新宿に近い雰囲気で、むしろ世田谷らしい広がりは多摩方面にあると感じています。そのあたりの風景を描きました。
──アレンジでこだわったポイントはありますか?
橋本:飼っているデグー(ネズミの仲間)の鳴き声や、雷鳴のような音も入れました。自分の気配すらもあんまりないような、自然や生活の中で鳴っている音を描きたくて。巽が持っている民族楽器を遊びながら弾いた音も残しています。聴いたときに、作っていた期間や関わってくれた人のことを思い出せるように、あえて“遊びの形跡”を残しました。
──この曲で表れたご自身のキャラクターは?
橋本:自分の中にある静けさやローテンションな部分が出てますね。

──そして最終曲“茗荷谷”。かつて橋本さんが暮らしていた街なんですよね。
橋本:はい、去年の今頃まで住んでました。僕は文京区がすごく好きで、歩くたびに景色が変わるのが魅力です。世田谷は余白が広いので同じような景色が続くことが多いんですけど、茗荷谷はいろんな顔が見えて面白いんですよね。あと、下北は石を投げれば当たるぐらいバンドマンが多いけど、茗荷谷では誰の目も気にせず、リラックスして過ごせました。
──どういうイメージで制作したんでしょうか?
橋本:茗荷谷は仕事や生活を加速させるような街ではないけど、精神的に落ち着ける場所でした。寄り道できる余白があって、その回り道が自分らしさを育ててくれた気がします。聴く人にとっても「そんな時期があってもいい」と思ってもらえるような曲になったらいいなと。
──曲は住んでいるときに作ったんですか?
橋本:曲自体は出てからですが、当時散歩中に残したメモを歌詞に入れたり、住んでいる時に録ったフィールドレコーディングの音も入っています。春になると桜が綺麗な、播磨坂っていう坂があって、そこで録った記憶です。
──歌詞についてはいかがでしょうか?
橋本:「僕らにとっての太陽も / 誰かの部屋のライトかも」というフレーズは、自分にとって大きく感じるものも宇宙規模で見れば部屋に灯る小さなライトくらいの存在かもしれない、という感覚から生まれました。自分がアリになったような視点を忘れたくないというか、そういう想像力を持っておきたいという感覚ですね。
──この曲に反映されたキャラクターは?
橋本:“フラットな自分”ですかね。バンドだと感情の起伏が激しくて、作品を作ったり大きなライブを終えた後は、精神的に着地が難しいときもあるんです。浮き沈みがあっても、凪の状態を自分で知っておけば戻りやすくなる。ソロ活動はそういう場所になれると思うし、そのサイクルが自分を健康的に保ってくれる気がします。
──ここまで全曲解説していただきました。今後、ソロで挑戦したいことはありますか?
橋本:もっと削ぎ落とした先で、ギター一本と歌だけで成立する曲を作りたいです。それと同時に、自由に挑戦できる場でもありたいですね。今年7月にヘルシンキで〈Billboard Live TOKYO〉に出たんですけど、ソロでも立ってみたいなと思っています。もっと近い距離感で聴いてくれる人とコミュニケーションをとれる場所も大事にしていきたいですね。
バンドはどうしても規模やスピードを大きく保つ必要があって、なかなかマイペースを維持するのが難しいところもあります。かみしめる時間を持てないまま、次々と別のことがやってきてしまうのも、自分にとっては健康的じゃない気がしていて。一つ一つをかみしめながら、その手触りを感じられる活動ができたらいいですね。
──このEPを出したことによって、ヘルシンキの活動やサウンドにどんな影響を与えると思いますか?
橋本:ソロがあることで、ヘルシンキのサウンドはより明確でソリッドになると思います。ソロでフラットな自分を表現できれば、ヘルシンキではもっと自分を開放して振り切ったことができる。その意味でどちらも表現の強度は増していくんじゃないかと思っています。
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