REVIEWS : 112 現代音楽〜エレクトロニック・ミュージック (2025年12月)──八木皓平

"REVIEWS"は「ココに来ればなにかしらおもしろい新譜に出会える」をモットーに、さまざまな書き手がここ数ヶ月の新譜からエッセンシャルな9枚を選びレヴューするコーナー。リリース量の関係で前回お休みでしたが八木皓平による、現代音楽〜エレクトロニック・ミュージックを横断する、ゆるやかなシーンのグラデーションのなかから作品セレクトが帰ってきました。
OTOTOY REVIEWS 092
『現代音楽〜エレクトロニック・ミュージック(2025年12月)』
文 : 八木皓平
Darian Donovan Thomas 『A Room With Many Doors: Day』
LABEL : New Amsterdam
年間ベスト級。自分のnoteにも長文の論考を書いたが、バイオリニストとしてのアイデンティティを持ちながらこれほどまでに完成度の高いポップ・ミュージックを作っている音楽家は指折りだ。アルージ・アフタブのもとでバイオリンを奏でながら、こんなにも素晴らしい音楽を構想していたなんて思いもしなかった。クィアとして生きる自身の心情を音楽に忍ばせながら、繊細でアイディアに満ちたサウンドを、ピチカート奏法とミニマルな電子音を重ねながら作ったことに静かな感動を覚える。サン・ラックスのイアン・チャンや、ベン・スローンというユニークなドラマーとのコラボレーションもじつに楽しい。そんなことを言っていたらInfraSound Ensembleとともに『Book of Sorrows』というこれまた見事な作品をリリースしていた。そちらもぜひチェックしていただきたい。
Daniel wohl / Alarm Will sound 『Artificial』
LABEL : New Amsterdam
ダニエル・ウォールは現代音楽を突き抜けて、エレクトロニック・ミュージックを煮詰めていった結果、アルカにも匹敵しうるサウンドをものにしてしまった、怪物的な音楽家だ。オリジナル・アルバムとしては『Daniel Wohl:Holographic』(2016年)、『Etat』(2019年)といった傑作をリリースし、2020年代に入ってからは、『Project Blue Book』(2020年)、『On the Come Up』(2022年)といったテレビ・シリーズ、映画のサウンドトラックをまとめあげ、そのどれもが輝かしい完成度を誇っている。そんな彼が突入した新たなステージが新曲「Artifical」だ。アラーム・ウィル・サウンドの演奏が、彼のサウンドに華やかなアンサンブルを提供し、「人工的」と名付けられた本作に有機的な色彩を加えている。当初はエレクトロニック・ミュージックとして制作された本作は、その後、アコースティックで再構築され、もういちどエレクトロニクスの要素を導入したものであり、制作過程でAIも取り入れられたとのこと。
Kara-Lis Coverdale 『A Series Of Actions In A Sphere Of Forever』
LABEL : Smalltown Supersound
今年3枚のアルバムをリリースし、そのどれもが聴きごたえのある傑作だったカラ-リス・カヴァーデイルがとうとうアコースティックなピアノにフォーカスした作品をリリースした。いわゆるポストクラシカル的な本作は、ミニマルなタッチでピアノに触れる彼女の魅力を引き出している。注目すべきは、アコースティックなサウンドにひっそりとプロセッシングすることで、倍音の魅力を際立たせていることだ。静寂の向こう側で柔らかに立ち上がり、増幅してゆくピアノの音響に包み込まれるような体験は唯一無二だ。エレクトロニクスとピアノ、というのはティム・ヘッカーとのコラボで注目された彼女のキャリアを通して、ずっと追求されたテーマだ。そのテーマがもたらした最も甘美な果実が本作だ。





































































































































































































































































