REVIEWS : 111 ダブ (2025年11月)──河村祐介

"REVIEWS"は「ココに来ればなにかしらおもしろい新譜に出会える」をモットーに、さまざまな書き手がここ数ヶ月の新譜からエッセンシャルな9枚を選びレヴューするコーナー。今回の更新は、OTOTOY編集長でもあり、昨年、監修本『DUB入門』刊行した河村祐介が「『DUB入門』その後」的な新作+テクノ〜ハウスなどの気になる作品を隔月で紹介します。今回は10月、11月リリース。
OTOTOY REVIEWS 111
『102 ダブ、テクノ(2025年11月)』
選・文 : 河村祐介
The Bug Vs Ghost Dubs 『Implosion』
Pressure / Minimal Dub
ひとことで言うと目眩がするほど「重い」音。ザ・バグことケヴィン・マーティン主宰の〈Pressure〉より、昨年アルバムをリリースし注目を浴びたゴースト・ダブス(それ以前はリズム&サウンドとニュールーツ系のサウンドを行き来するようなジャー・シュルツ名義で主に活躍)とザ・バグによる、純粋なコラボではなく、1曲ずつのサウンド・クラッシュ的なスプリット・アルバム。とはいえ、ザ・バグはゴースト・ダブスに作風を寄せていて彼もスクリュードなミニマル・ダブを披露(若干バグの方がノイジーな感触)。マッシヴ・アタック『Mezzanine』の冒頭の低音だけをひたすら増幅させたような音楽というか、極めて低めの重心のベースラインでハメまくるストーナーなミニマル・ダブ。サウンドシステムでのダブ体験、まるで物理的な質量があるかのような空気の振動を、そのまま音楽体験として抽出したような轟音の壁というか。ちなみにザ・バグの曲に付いている地名は、すべてブルース・パーティや、ジャー・シャカのシステムがよく開催されていた場所などダブのサウンドシステム、またはダブステップ~ベース・ミュージックの重要クラブ / 地点。マスタリングは名匠、ステファン・ベトケ(ポールさん)。ただただ低音にまみれていたい人はぜひ。
Element 「Motion Exchange」
Mal / Stepper
1TAとともに〈Riddim Chango〉を主宰するタカハシヒロシことエレメントがジョン・K&エル・アンドリュースの〈MAL〉から6曲入りEP。ジョン・T・ガスト~コンラッド・パック / DJゴンズへの日本からの回答とでも言えそうな、UKサウンドシステム由来のデジタル・ニュー・ルーツ・ステッパーを、よりダンス・ミュージックとしてミニマルに再構築した感覚のサウンド、と言えるがもっと複雑な要素がいろいろ入り込んでいて、それが絶妙なバランスで展開され、本作をより魅力的なものにしている。ニュー・ルーツのシンフォニックな要素もトランシーに盛り込みつつ、グライムの不穏な空気感、ミニマル・テクノのグルーヴ感なども見え隠れするヘヴィーウェイトなデジタル・ダブ。『Longest Summer』はフルーツ・チャン監督による香港カルト映画『メイド・イン・ホンコン』のテーマ曲を再構築。
Big Hands 「Anti Militarist Dubs」
Upstairs//Downstairs / Techno
メルボルンの同名パーティ・コレクティヴがレーベルを設立、第一弾のEPは先鋭的なビートのベース・ミュージック・レーベル〈Baroque Sunburst〉を主宰するなど最近活動がめざましい、イタリア出身ロンドン・ベースのビッグ・ハンズのニュー。今年の頭に出した『Thauma』では自身も参加するバンド、オットマニ・パーカーとそのメンバーによるコラボで生演奏も盛り込みジャズとダブ・テクノ~ブロークン・テクノの絶妙なるハイブリッドを示した実験的な作風でしたが、今回はそれよりももう少しフロア・ライクにストレートなダンス・トラック寄りの作風に。ポリリズムと野太いベースのブロークン・テクノを展開していて、アル・ウートンの〈Trule〉からリリースしていた作品なんかを彷彿とさせる作風。レーベルの地元メルボルンのプジョリストとのコラボは「らしい」、ダビーにポリリズミックなダブ・テクノ。と、そのコラボ曲を除く3曲はローマ帝国の歴史的な大敗となった戦いをタイトル(コラボ曲は「失地」なのでコレも繋がっていそう)に、さらに作品全体のタイトルを重ねると、というコンセプチャルなテーマも見え隠れする作品(Spotifyにないのもそのあたり?)。










































































































































































































































































































































































































































