2026/01/09 19:00

高橋健太郎x山本浩司 対談連載

『音の良いロック名盤はコレだ!』 : 第13回

お題 : パティ・スミス 『Trampin'』(2004年リリース)

オーディオ評論家、山本浩司と、音楽評論家でサウンド・エンジニア、そしてOTOTOYプロデューサーでもある高橋健太郎の対談連載。本連載では、音楽、そしてオーディオ機器にもディープに精通するふたりが、ハイレゾ(一部ロスレス)音源と最新オーディオ環境を通して、改めて“音の良さ”をキーワードにロックの名盤を掘り下げてみようという連載です。毎回ロックの名盤のなかから「音の良さ」で作品を選び、解説、さらにはそのアーティストの他の作品、レコーディングされたスタジオや制作したプロデューサー / エンジニア、参加ミュージシャンなどの関連作品など、1枚の「音の良い」名盤アルバムを媒介にさまざまな作品を紹介していきます。

第13回の名盤はパティ・スミス『Trumpin'』、2004年にリリースされた作品。今秋、代表作とも言える『Horses』の50周年記念盤などもリリースされましたが、今回はまさに「音の良さ」にこだわってあえての2000年代の作品に。そしてオーディオ機器の方はWiiMのWiiM Amp Ultra。コンパクトなボディにパワー・アンプ機能も内蔵のまさにオールイン・ワンなストリーマー。これ1台とペアのスピーカーがあれば簡単にハイレゾに対応したストリーミングを中心にしたデジタル・オーディオ環境を構築できます。

本連載13枚目の音の良い“名盤

今回の視聴機材──WiiM Amp Ultra

Wiim Amp Ultra、シルバー・モデル

コンパクトなボディのなかにネットワーク・ストリーミング再生のデジタル・オーディオ機能と高性能アンプが一体化したオールイン・ワン・ストリーマー。端的に言えば本機とインターネット環境、スピーカーがあればすぐにハイレゾにも対応したストリーミング・デジタル・オーディオ環境を構築できます。アプリ、WiiM Homeとの連携での簡単操作、そしてさらにアプリでは設置場所での最適な音質調整を自動設定する機能(RoomFit機能)まであるので、オーディオ初心者でもすぐに最適な音質のデジタル・オーディオが楽しめます。しかも実売価格にして10万円を切る驚きのコストパフォーマンスを実現。もちろんUSBストレージ経由でOTOTOYで買った音源も簡単に再生できますよ(詳細はページ後半にて)。(編集部)

あえてのパティ・スミスの2000年代作品、その音の良さ

本記事でフィーチャーされている楽曲のプレイリストはコチラ、ぜひ聴きながらお読みください

高橋:またしばらく時間が空いてしまいましたが、この対談連載、これまでは1970年代のアルバムの話が続きました。でも、現代の話もしたいねっていうことで、山本さんにお話ししたら、真っ先に名前が出たのがパティ・スミスでした。

山本:はい。「21世紀の音の良いロック・アルバムは?」なんて問いがあったらですね、パティ・スミスの2004年の『Trampin'』と2012年の『Banga』、僕はこの2作が最初に頭に浮かんでくる感じななんですよ。

高橋: ちょっと意外でした。

山本:ええ、僕はニューヨーク・パンクとかパティ・スミスとか、それほどファミリアーではないんですけど、この2枚は凄くよく聴きました。音が良いって、色んな捉え方があると思うんですけど、特に『Trampin'』は非常にシンプルな録音でいながら、スペースとエアーのある音楽というか、目の前で自分のために演奏してくれている的なイメージが強く感じられる。音の鮮度感が高いし、生々しいし、音楽にダイレクトに触れてるような、そんな感覚が得られるので、この2枚はすごく好きなんですよね。

高橋: 僕はパティ・スミスは70年代から聴いていました。あと、このへんのニューヨーク・サウンドっていうのは、ニューヨークのは滞在経験も多いし、スタジオなども色々見てきたから、ファミリアーなんですね。で、今回、山本さんに言われて、『Trampin'』と『Banga』を聴き直したんですが、基本は変わってないですよね。僕は1976年の『Radio Ethiopia』ってアルバムが大好きで、パティ・スミス・グループ名義になった最初のアルバムですが、この時からギターのレニー・ケイ、ドラムスのジェイ・ディー・ドハーティはずっと一緒です。

山本:そうか、この人たちずっと同じバンドでやってるんですね。

高橋:だから、やっていることは変わらないんですけれど、プレイリストに入れた『Radio Ethiopia』の「Ask Angel」と『Trampin'』の「Jubilee」を聴き比べると、年輪を積み重ねてきた強さとか、確かさとか、説得力が凄いですね。

山本:ひとつのものを信じてやってる人たちの音楽が持つ訴求力ですね。特に『Trampin'』について言うと、ベースとドラムの音がめちゃくちゃ良いんですよね。オーディオ的に言えば、量感が保たれていながら、音に芯があるというか。

高橋:『Trampin'』はパトリック・マッカーシーというエンジニアがミックスしています。僕もそこまでマークしていた人ではないんですが、調べてみたら、アイルランド出身で、U2の『The Joshua Tree』(1987年)でアディショナル・エンジニアのクレジットを得ていて。その後、ニューヨークでエンジニアとして活動してきた人のようです。スザンヌ・ヴェガの1990年の『Days Of Open Hand』というアルバムでもレコーディング・エンジニアを務めています。スザンヌ・ヴェガはもともとレニー・ケイがデビュー・アルバムをプロデュースしているという繋がりもあるので、プレイリストにも1曲選んでみました。その後、1996年にパティ・スミスのアルバム『Gone Again』とパティも参加したR.E.M.の『New Adventures In Hi-Fi』でもレコーディング・エンジニアを務め、そこで信頼を掴んだんでしょうね。両者のアルバムの常連になっています。

山本:そうか、いろんなことやってきた人なんですね。

高橋:あと、『Trampin'』のミックスが行われた〈ルッキング・グラス・スタジオ〉って、僕行ったことあるんですよ。

山本:それはいつ頃ですか?

高橋:1992年くらいかな。今井裕さんプロデュースしたトゥマニ・ジャバテ&シンメトリック・オーケストラというアフリカ音楽のプロジェクトをお手伝いしてたんですが、そのミックスが行われたのが同じルッキング・グラス・スタジオでした。エンジニアはアンビシャス・ラヴァーズなんかをやっていたロジャー・ムーティノで。フィリップ・グラス所有のスタジオで、割とそっけないビルの一室という感じだったんですけど、よく憶えているのがモニターがジェネレックのS30Cというタイプで、リボン・ツイータの3ウェイだったんです。

山本:ジェネレックにそんなのあったかな?

高橋 : リボン・ツイーターのジェネレックは珍しいですよね。当時は僕はジェネレックのサウンドが嫌いだったんですよ。音が派手というか、最初から迫力ある音でモニターされちゃうんで、それでOKと思った録り音をヤマハの10Mで聴き直してみると。「あれ? こんなしょぼい音だった?」ってなっちゃう。でも、このS30Cは良かったんですよ。

山本:ウーハーは10インチぐらい?

高橋 : いや、8インチでしたね。いつか使ってみたいなと思ったスピーカーなんですけれど、日本では見たことない。

山本:見たことないですね。

[連載] Patti Smith

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