すいそうぐらしの言葉が、音になって溢れた日──すいそうぐらし 1st ONE-MAN LIVE「それでも好きって言ってほしい夜。」

2025年10月13日、渋谷WWW Xで開催された、すいそうぐらし初のワンマンライブ「それでも好きって言ってほしい夜。」。この日、会場はまるで“恋の感情”を閉じ込めた水槽のように、淡い光と静かな熱を帯びていた。このレポートでは、すいそうぐらしの音楽がどのようにライブという形で息づき、観客の心を満たしていったのかを、ステージの一瞬一瞬とともに振り返る。
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LIVE REPORT : すいそうぐらし 1st ONE-MAN LIVE「それでも好きって言ってほしい夜。」
取材&文 : ニシダケン


そのステージは、まるで透明な水槽のようだった。淡い光に包まれ、静かに揺れる空気。すいそうぐらしがこれまで描いてきた「言葉にできない恋の痛み」と「それでも誰かを想うやさしさ」が、音と映像になって会場いっぱいに広がっていく。
これは2025年10月13日、渋谷WWW Xで開催されたすいそうぐらし 1st ONE-MAN LIVE「それでも好きって言ってほしい夜。」の記録である。
開演時刻を迎えると、オープニング映像が流れ出す。そこに映し出されていたのは、渋谷の喧騒の中、思いを寄せる彼が、楽しげなコミュニティの中で他の女性と親しく笑い合う様子を、インスタグラムのストーリー越しに見てしまい、ひとり取り残される主人公の女性の姿。彼女がここ、WWW Xへと足を運んだ時、タイトルが現れ、ライブがはじまった。


セットリストの1曲目はすいそうぐらしのはじまりの曲「嘘でも好きって。」。Eyeの透き通る声が空間を満たすように広がると、ブルーのペンライトが会場に輝きはじめた。s-numが紡ぐメロディは優しく、それでいて切ない。その音の中で、“本当じゃなくても好きって言ってほしい”という願いが、会場にいる誰もの心に届いていく。
続く「不在着信、雨フラス。」で、雨が地面にぶつかって跳ねるようなリズムとともに、連絡の途絶えた寂しさを描くと、さらに「大人なフリして。」では、ジャジー軽快なテンポに乗せて、“強がることしかできない自分”を歌うEyeの表情が印象的だった。痛みと微笑み。その対比が、序盤からこの夜の物語が立ち上がっていくようだった。
最初のMCを経て披露された「私だけが好きだった。」は、ポエトリー・リーディングを挟んでのドラマチックな演出からスタート。忘れられない恋を頑張って忘れようとしている想いが、声と照明とで立体的に浮かび上がる。続く「濡れたスカート。」では、都合のいい関係を「それでもいいや」と受け入れる少女の心情が描かれ、会場はしっとりとした静寂に包まれた。


そして披露されたのは、新曲「飲み干して、口付け。」。Eyeの吐息交じりの歌声と、s-numの緻密なピアノの音色が重なり、現実と幻想の境目を滲ませていく。この曲で、すいそうぐらしが“恋の物語”をさらに大人の世界へと踏み出したことを感じた。
中盤では、2年前に一旦区切りとなっていた、Webラジオ「すいそうぐらしEyeのおしゃべりぐらし」のリアルタイム版も実施。事前にリスナーから寄せられた質問を読み、それに回答していくという、いわゆる「ふつおた」的なコーナーが繰り広げられ、軽快なトークでリスナーとの距離が一気に縮まる時間が流れた。
ここではEyeの本職ラジオパーソナリティ顔負けの、メール読みの技術とトークの構築力がとにかく素晴らしかった。よくよく考えれば、「ラジオ」というメディアは、一人で聴いていても、同じ時間、同じ番組を共有しているという一体感が得られるものであり、すいそうぐらしというグループの世界にかなりマッチしているように感じた。


ひとしきり、トークを弾ませると、次のブロックでは、その流れから「雨上がり、夏の距離。」へ。まるで夏の夕立が過ぎ去ったあと、少しだけ前に進めるような、やさしい空気を漂わせる。「咲カナイ、ハカナイ。」「降りたくないです、この恋から。」と続くブロックでは、“叶わない恋”をテーマにした楽曲群が連なり、会場全体が静かな共感に包まれる。このユニットの根底にある“どうしようもなく不器用な愛し方”が、すべての音に滲んでいた。
Vlog映像を挟み、ライブは後半へ。センラの「1ミリの関係。」のカバーで、原曲の切なさをすいそうぐらし流に染め上げたあとは、ここでなんとバーチャルアーティストのIAとOИEのふたりがサプライズ出演。まずはOИEとのコラボで「0:45、既読ナシ。」を披露し、SNS時代の恋愛を象徴するようなテーマを、ふたりのボーカルが交差しながら描き出す。続くIAとの「ブルーで溶かして。」では、美しい照明の中、デジタルと人間の境界を感じさせるステージに。s-numの音世界がより深く、立体的に広がる瞬間だった。


ライブはそこからクライマックスへ。その後の「微熱と眼差し」では観客のクラップが加わり、音と感情がひとつになる。さらに新曲「深夜限定の踊り子。」では、自分に割いてくれる時間が”深夜”しかない様子を描くような世界が広がる。本編ラストは「1億等星、会えますように。」。s-numの作り出す疾走感のあるピアノとEyeのまっすぐで優しい歌声が重なり合い、渋谷WWW Xをすいそうぐらしの色に染め上げていた。
アンコールでは「春なのかもね。」から始まり、「夜空に咲いて、君に落ちて。」「それでも好きだよ。」の3曲をパフォーマンス。この夜に込められたすべての想い──嘘でも、報われなくても、それでも愛してしまう気持ち──が、確かにひとつの光になっていた。


ライブを終えると、オープニング映像の続きが流れる。
そこには、都合よく扱ってくる彼を結局断ち切れずも、すいそうぐらしの音楽を聴いて、新たな一歩を踏み出した主人公の姿が映し出されていた。それはきっと、どんなときでもすいそうぐらしはあなたのそばにいます、というメッセージなのだろう。終演後、会場からの拍手はしばらく鳴りやまなかった。
すいそうぐらしという名前の通り、彼らの音楽は静かで、儚くて、けれど確かに生きている。“言葉にできない気持ち”を、音にしてくれる存在。この夜、彼らはそのすべてを、大都会・渋谷の水槽の中で証明してみせたのだ。


■セットリスト
すいそうぐらし 1st ONE-MAN LIVE「それでも好きって言ってほしい夜。」
2025年10月13日 at 渋谷WWW X
M1. 嘘でも好きって。
M2. 不在着信、雨フラス。
M3. 大人なフリして。
M4. 私だけが好きだった。
M5. 濡れたスカート。
M6. 飲み干して、口付け。
M7. 雨上がり、夏の距離。
M8. 咲カナイ、ハカナイ。
M9. 降りたくないです、この恋から。
M10. 1ミリの関係。(センラカバー)
M11. 0:45、既読ナシ。(OИEコラボ)
M12. ブルーで溶かして。(IAコラボ)
M13. 微熱と眼差し。
M14. 深夜限定の踊り子。
M15. 1億等星、会えますように。
EN1. 春なのかもね。
EN2. 夜空に咲いて、君に落ちて。
EN3. それでも好きだよ。
フォトギャラリー
アルバム『嘘でも好きって言ってほしい夜。』配信中!!
PROFILE;すいそうぐらし
コンポーザーs-num(スナム)とボーカルEyeによるプロジェクト。都会の狭い部屋で暮らしている様子がまるで水槽に閉じ込められているように見えたことが由来。 言いたいことが言えない世の中のもどかしさを歌にすることを目指す。
X:https://x.com/suisougurashi
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCGGlQZ0z2V3_WnZnmMfw5BQ
音楽配信:https://big-up.style/aI3fgbktQk












































































































































































































































































































































