【REVIEW】 答え合わせは、棺桶の中で──NaNoMoRaL 5thミニアルバム 『wa se te wo』

NaNoMoRaLの音楽だけが触れられる琴線がある。彼女たちの楽曲を聴いたひと、なによりNaNoMoRaLのライブをみたことがあるひとのほとんどは、そう感じたことがあるだろう。諦念や死生観を優しく明るく包み込む歌声、聴くたびにはっとさせられるポップスとしての強度。なにが聴くものたちの心を震わせるのか。NaNoMoRaLの結成からその活動を見守ってきた南波一海が、『wa se te wo』のレビューを通じて解き明かします。
【REVIEW】 NaNoMoRaL 『wa se te wo』
文 : 南波一海
2021年の『ne temo same temo』以来となるNaNoMoRaLのニューアルバム『wa se te wo』。前作から4年の月日が流れたが、それだけの期間が空いたようには感じなかった。
その間、2023年には4曲入りのEP『KonoYono』がリリースされ、また、お笑い芸人の岡野陽一の単独公演に毎年テーマ曲が書き下ろされてきたため (『wa se te wo』の半分はその楽曲だ)、長く待たされたようには思えなかったのだ。
しかし、こうして『wa se te wo』を通して聴いているいま、自分が聴きたかったのはこれだったのだという安心感と、未知のものに触れる新鮮な高揚感とが同時に押し寄せている。この感覚はやはり久しぶりで、改めてNaNoMoRaLの作品の世界にどっぷりと浸ることの喜びを噛み締めている。雨宮未來と梶原パセリちゃんのふたりが作り出すアルバムはいつも、唯一無二の体験をもたらしてくれる。
一曲目の「だま」。大人になって社会に出ることと夢を抱き続けることを対比させて描いたもので、“どうせ 目的地は同じ” と歌われる。つまりは、誰もがいつか必ず死を迎えるのであればどう生きるか。それを問う歌だ。サウンドはシングルのときよりもダイナミックになっており、歌はあっけらかんとした明るさが増している。このポップな感触と死生観の同居がNaNoMoRaL最大の特徴だと個人的には思っている。
続く「前略、棺桶の中より」はドラム、ピアノ、ギター、ベースの有機的な絡みがあまりにバンド然としている楽しいロックナンバー。歌詞は、タイトルからして死を扱ってはいるものの、“きっと君はダメじゃないはずだ 答え合わせは 棺桶の中で” と「だま」と同じく生きることを強く肯定しているようにも聴こえてくる。“本当に大切なものは そんなに大きくないのだ” あるいは “そんなに遠くはないのだ” という歌詞も胸を打つ。
「メデタシ」はパセリちゃんのソングライティングが冴え渡っている (というか全曲冴えているのだけれど!)。J-POPに慣れ親しんだ人であれば間違いなく琴線に触れるであろう気持ちのよいメロディと構成で、ポップスとしての強度が異様に高い。歌詞の “明日が僕の命日ならば 今日はどうやって楽しみましょう” はこれまでの曲と同じテーマを貫いているし、それと対比させて “明日が僕の誕生日ならば 今日はどうやって苦しみましょう” という反対の言葉を並べ、楽しさも苦しさも含めたあらゆる人生を優しく包み込んでみせるのもNaNoMoRaLらしい筆致と言っていいだろう。
この星の終末から未来が始まることを想像する「ギリフギリ」。こうして歌詞を読み込んでいくと、どれもほとんど同じことを繰り返し歌っているのだと実感する。世界を見限ってしまったような諦念の境地と、それでもポジティヴに生きていく楽観的な思いがないまぜになったような言葉たち。それを奇跡的なバランスで成立させているのはやはり、雨宮未來のピュアな歌声ではないかと思う。どんな言葉を放っても決して暗い雰囲気にならない雨宮の真っ直ぐな歌声は、きっとパセリちゃんの作詞に多大な影響を与えているはず。
奇跡的、と書いた次の曲が「きせき」だったので、その言葉を使うのはこっちにとっておけばよかったかもしれない! ともあれ、ここでは音数が削ぎ落されたバックのなか、ふたりのユニゾンが続くのだが、そこからの終盤に向けてのドラマティックな展開は何度聴いても感動する。ユニゾンだったメロディにハモが付加されるのも見事。
「にんげんさんか」は、まさにNaNoMoRaLを体現するような楽曲だ。“劣等生” が人生の肯定と未来への希望を歌うこの歌の、ラストのコーラスはどこまでも凛々しく美しい。本作の山場と言っていいだろう。
最後を締めくくるのが「ピース」。サビの “過去の自分に嫌気がさしたり~” から始まる言葉の数々は誰しもが日々感じることに違いない。“それが生きるってことなのさ”。NaNoMoRaLのふたりは、本作のなかでずっと真理を射抜いている。
ところで、アルバム・タイトルの『wa se te wo』とは、一体どんな意味なのだろう? 私は「ピース」になぞらえて、「(しあ) wa se (なら) te wo (たたこう)」というメッセージが隠されているのだと想像している。NaNoMoRaLが「幸せなら手を叩こう」と掲げるのはとても似合っているし (それも誰かが気づけばいい、くらいのささやかな形で)、ピースでハッピーなことじゃないですか。
NaNoMoRaL 『wa se te wo』























