我々は「衝動」を抑えられない人種なんですよ
──"大遅刻"の歌詞は、どんなふうに思いついたのですか?
中嶋:とにかくその時期は忙しかったんです。実際に"大遅刻"はしてないけど(笑)、ちょいミスみたいなものをしてしまいそうなくらい、目の前のことにずっと追われていて。その時の気持ちが自然に歌詞に表れました。楽曲がすごく楽しい感じなので、逆に歌詞はこのくらいネガティヴに振り切っていてもいいかなと。
山本:"大遅刻"と"衝動買い"の歌詞は、明らかにイラついてますよね。"大遅刻"なんてもう、当時のイッキュウさんの生活ぶりを見ると、まさにこういうこと思ってそうだなと。
中嶋:あははは。殺伐としていましたね。「イエーイ!」みたいなテンションの歌詞は、とても作れない状況でした。
──「フライト時刻に間に合わない遅刻の歌」と見せかけ、後半では〈約束の年齢は過ぎちゃって〉("大遅刻")というふうに視点をずらしています。
中嶋:そうですね。人生っぽい話に持っていったら、曲らしくまとまるかなと(笑)。私と同年代の女性にも刺さりそうな歌詞が書けました。
──この曲はミュージック・ビデオも楽しいですよね。ちょっとアジアンテイストで。
中嶋:幹宗さん、タクシーの運転手をやってみたかったんですよね?
山本:そう(笑)。一度やってみたくて、監督さんに提案したらああいう映像になりました。実際に撮れ高が出るまで、森下(江東区)近辺をひたすら運転し続けましたね。
中嶋:空港も行きましたしね。
──"衝動買い"はどんなふうに作っていったのですか?
山本:トラックはニューオーダーの「Bizarre Love Triangle」や「Blue Monday」を意識しながら作ったんですけど、メロディが乗ったらWinkみたいな曲になりました。
中嶋:私はそういう元ネタとか一切わからず、感覚でメロディを入れたらアイドル・ソングみたいになったという。
山本:シンセのダサいバッキングに、いまじゃ考えられないようなクリーン・トーンのギター・カッティングを重ねるという禁じ手を使った曲です。
中嶋:ちなみに"衝動買い"は、忙しくてストレスが溜まった時だけではなく普段からしています(笑)。あまり計画性がないというか、調べたり比較したりするのが面倒くさくて。
山本:我々は「衝動」を抑えられない人種なんですよ。
中嶋:そう思います(笑)。
──この曲は、単に衝動買いのことだけを歌っているわけではなくて。ほろ苦い失恋ソングになっていますよね。
山本:これ、なかなか辛辣な歌詞ですよね。こんなふうに言われたくないから頑張ろうって思う。
中嶋:あははは。そうですね。でも、なににおいても一度手に入ったものは、いつか飽きてくるものだと思うんですよね。人もやし、モノもやし、もしかしたら音楽もそうかもしれない。いろんな物事に通じる歌詞になったかなと。
──この曲のミュージック・ビデオはアニメ仕立てで。
中嶋:そうなんです。幹宗さんがこだわってくれて。「アニメ番組のエンディング・テーマっぽい感じにしたい」とおっしゃったので、以前からずっと「かわいいな」と思ってインスタをフォローしていたボブさん(ボブa.k.aえんちゃん)に、面識とか一切ない状態からいきなりDMでオファーをしたところ、快く引き受けてくださいました。
