俺、前のバンドの1曲目くらいからずっと同じこと言ってるんですよ
──今回の"(茜)"はまっさらな新曲です。これ、最初は去年の4ヶ月連続リリース(編注)の、最後の曲になるはずだったもので。
小池:そうです。最初、気分で「じゃあリテイク、再録したいな」と思って、でも再録だけ出すのはあんまり気持ちよくない。それこそオマケ感覚だから、最後は絶対にいい新曲を、いまの形で新曲を出そうっていうのが最初のコンセプト。それで昨年の8月から12月まで開催した〈(茜)〉ツアーのなかで、いまのお客さんとのコミュニケーションを通していまの俺らっぽい曲が最後にできたらいいなっていう流れだった。
編注
teto時代の代表曲「kill&miss」「光るまち」「忘れた」とthe dadadadysの新曲「(茜)」を2023年8月23日から4ヶ月連続リリースすると発表。企画最後のシングルとして11月29日(水)に配信予定だった「(茜)」のリリース延期が昨年告知されていた。
──ツアー・タイトルを決めた段階で「(茜)」がすでにあった?
小池:いや、曲はなくて名前だけ。「(茜)」を作ろう、「(茜)」って曲をどう作ろうか、っていうツアーだった。ただ、そこからなかなかね、寄り道もあって。要は「(茜)」が自分のなかで定まってなかった(笑)。曲作りしてて、半分くらいできてたんだけど、もうちょっとじっくり考えたいところもあって。あと俺『らんま1/2』がすごい好きで。天道あかね。
──あ、そこから来てるの?
小池:そこからタイトル取ったわけじゃないけど、そういえば『らんま1/2』もあかねだ、と思って。そこから主題歌めっちゃいいなぁって思い出して、「じゃあこれカヴァーしようぜ」って。それを儀間に1回投げたら、出てきたアイディアがめちゃめちゃカッコよかったんですよ。時期としては"(茜)"を作ってる最中だけど、先にそのカヴァーを完成させたくなって。俺、我慢も満足もできないタイプだから。そしたら"(茜)"が放ったらかしになって、遅れた。で、「どうせ遅らせるなら、これもう1曲ぐらい作らない?」ってノリで、最後の"OS!"ができた。
儀間:"OS!"はレコーディング中に作りましたね(笑)。
小池:そう。遅れて2曲入りが出るんだったら、さらに遅らせてもう1曲あったほうがおもろいなと思って。
──単純に、スタッフに怒られたりしないんですか。
小池:まぁ内心は怒ってらっしゃるかもしれない(一同笑)。ただ、そこは別に大事じゃない……と言ってしまうと申し訳ないけど。でも自分たちがいちばん興奮できることしかやりたくないし、届けたくないので。だから俺としては、リリースが遅れちゃったことよりも、"じゃじゃ馬にさせないで"のカヴァーがすごくよくなったことのほうが満足感が高い。
──その行き当たりばったりな感じ、どうなるかわからないドキュメント性が、このバンドはおもしろいのかもしれない。
小池:絶対あったほうがいい。俺、ほんとにメンバーを騙したいので。騙すっていうか驚かせたい。基本的にはそれしかない。メンバーが驚くこと、いい意味で期待を裏切られた、みたいなことが毎回できないと終わりだと思ってる。
佐藤:俺たちは毎回まんまと驚いてます(笑)。でも、そこで毎回いいものが生まれてきてるなって感じもありますし。
──新曲の"(茜)"も驚きましたね。このギターはすごく新鮮。
山岡:進行とかコードは僕が考えて。
小池:さらに上モノを儀間が足してくれた。
儀間:ここまでしっかりリードギター弾くのって、たぶん僕が入ってから最初ですね。この曲、そういう雰囲気の違いはあると思う。いつもと役割が違うから、新しい感じになってるのかな。
小池:こういう曲、the dadadadysになってから作ってなかったしなぁ、っていうのもありましたね。ちょっとエモっぽいようなフレーズ。
──歌詞がいいですね、この曲は。
小池:あ、そうですか。俺は"OS!"のほうが歌詞いいと思ってるけど。よければ"OS!"の歌詞の話をしたいくらい。
──それは後で聞くとして。"(茜)"みたいな歌詞はthe dadadadysになってあんまり書いてこなかったもの。
小池:偉い! 偉いですね。偉い歌詞。
──偉い? 立派ってこと?
小池:うん。「立派! 偉い、あなたは偉いよ!」って俺は自分に言ってあげたい。「いまのお前がこれ書くの偉いよ」って。
──……どんな意味で言ってます?
小池:いや、こんなこと言わなくていいんですよ。もう散々言ってきたことだから。俺、前のバンドの1曲目くらいからずっと同じこと言ってるんですよ。言い回しとか風景とかシチュエーション変えてるだけで、一生同じこと言ってるんです。
──自覚はあるんですね。
小池:自覚ある。もうたぶんこれしか言うことがない。他に言うことがあるとしたら"OS!"の、〈アナルに爆竹入れてまかしたる〉みたいな歌詞になる。"(茜)"はもう、たぶん言い尽くしてること。散々言ってること。
──でもまた書きたくなった?
小池:……書きたい? 書きたいですか、これ? 書きたくないでしょう。
──でも書いてるじゃない(笑)。
小池:うーん……書くべきだな、とは思ってる。どっちかと言うと。書きたいっていうよりは、書くべきだな。

──結局は変わらない少年の小池さんもいる。ただ、痛みをそのまんま引きずってないのがいまというか。
小池:もちろん。いつまでも痛い痛い痛いって言ってらんない。大人なので。ただ演奏がね、素敵なフレーズ、俺の好きな感じのギターだったので。メロディと言葉を助長させる曲。こういう曲だからこれ言えるなぁって感じで、引っ張られて出てきた。
──いいことですよね。
小池:うん。めちゃくちゃいいこと。
佐藤:オケが全部終わってからはじめて俺らは歌詞を知るんですけど、最初に聴いた時はすごく嬉しかった。確かに、言ってることの本筋は昔から変わらないかもしれないけど、その強度というか、毎回超えて刺さってくるものがあったから。うん、読みたいし聴きたい、そういう歌詞だなと思いましたね。
yucco:うん。tetoの時代からずっとそうですけど、いい歌詞だなぁって。
──自信作の"OS!"は、また対極みたいな歌詞ですけどね。
小池:うん。よくないですか? 〈小童にハリケーンアッパー チンゲ燃やすバーナー〉とか、たまんないですよね。
──(笑)。でもこれ、別にふざけただけの曲でもないですよね。
儀間:最初はギターのフレーズでしたよね。
小池:クラッシュの「ジミー・ジャズ」と、あとはなんだっけ? ハード・ロックとかグラム・ロックの有名なやつ。上モノが派手だからパンク・ロックみたいになりましたけど、でも最初にやってたのはもっとクサいこと。めちゃめちゃ燻銀のギターから始まってる。
──実は古風なロックンロール寄りの曲が多い。
山岡:俺の癖なんですよ。すぐロックンロールになっちゃう。誰よりもチョーキングがクサいっていう。
小池:でもそこがおもしろさ。「そこ絶対出して」っていうところでもある。レコーディングでギターソロ弾いてる時にみんな爆笑してるもん。「これ真面目に弾いてんのマジでヤバい!」って。
山岡:俺はなんで笑われてるのかマジでわかってない(笑)。
儀間:このアンバランス感がおもしろい。
──5人でワイワイやっている楽しさは曲からも伝わります。いま、歌うこと、表現することに見返りは求めてないですか?
小池:うーん……そこまで。十分もらえてる感じはあるかな。もちろん、まだ満足はできないけど。
──ずっと気になっているのは、前のバンドの時にダダ漏れになっていた、成仏できない痛み、みたいなもの。それは今意識的に封印しているのか、完全に消えてしまったのか、どっちなんだろうってことで。
小池:どうだろう? 封印……できてなくないですか?
──出てはくるけど、そこまで生々しくない。見ていて辛くならないから。
小池:あぁ。辛い思いはさせたくないです。俺もしたくないし。辛い思いはさせちゃダメです。そういうこと、ちゃんと考えたわけじゃないけど、結果そうなった感じ。昔の通りにはやっぱりやれないですね。
佐藤:さっきの歌詞の話にもつながりますよね。もちろん楽に書いてるとは思わないけど、ちょっとの気楽さが乗ってる感じがいまはするのかな。そこが好みだなって思うし。いい意味で、前の緊張感は中和されてる。
──このバンドは、将来的にどうなっていたいですか?
小池:ずっとこれをやりたい。この形のまま転がり続けていたい。"OS!"みたいな曲でローリン・ローリンしてたい。ヤバいでしょ、これでバラードとか歌い出したら終わりですよ?
──終わりだとは思わないけど。いつか出てきそうな気もするし。
小池:……それはね、その時はまた「偉い」って言います。いまはもっと、いろいろ5人で固めていきたい。もっと広げたいし模索したい。ひとつに決めちゃうのはもったいないから。

編集:梶野有希
西尾えつ子「じゃじゃ馬にさせないで」カヴァーを含む3曲入りシングル
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ライヴ情報
Live House Pangea presents 「Sound Of Continental Drift 2024」
日付:01月30日(火)
時間:18:00(開場) / 18:30(開演)
場所;新代田FEVER
出演:the dadadadys, 愛はズボーン, 鋭児, ここで生きてるず
チケット:https://eplus.jp/sf/detail/4007740001-P0030001
sprout
日付:02月05日(月)
時間:18:30(開場) / 19:00(開演)
場所:渋谷La.mama
出演:the dadadadys, Enfants, climbgrow
チケット:https://eplus.jp/sf/detail/4025730001-P0030001
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PROFILE:the dadadadys
メンバーは小池貞利(Vo / Gt)、 儀間陽柄(Gt)、山岡錬(Gt)、 yucco(Dr) 、佐藤健一郎(Ba)。2022年1月26日、tetoとして6年間の活動をしていたヴォーカル・ギターの小池貞利、ベースの佐藤健一郎に加え、あらたに元2のドラマー、yuccoが正式加入し、この3人でthe dadadadysを結成。同年1月、両A面配信シングル「ROSSOMAN!」をリリース。同年4月、〈RECORD STORE DAY JAPAN2022〉にて「Do Wah dadadady」を10インチレコードでリリース。同タイトルの配信も開始。サポート・ギターとして参加していた山岡錬が正式メンバーとしてバンドに加入し、4人編成となる。同年5月、東京キネマ倶楽部を皮切りに全国9箇所を廻るワンマンツアー〈the dadadadys TOUR 2022〉を開催。同年9月、全6公演の対バンツアー〈the dadadadys TOUR 2022〉を開催。同年11月、両A面配信シングル「らぶりありてぃ / k.a.i.k.a.n」をリリース。同年12月、東名阪ワンマンツアーを開催。2023年1月26日、儀間陽柄(ex.ヤングオオハラ)がバンドに加入し、5人編成となる。2023年3月22日に配信限定EP『だ』『da』2作同時リリース。同月3日に新代田FEVERにてワンマンライブ〈三三愛燦燦〉開催。チケットは即日完売。4月より全国ワンマンツアー『(許)』を開催予定。
■公式X(Twitter):https://twitter.com/dadadadys_info
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