Joe Chambers 『Samba de Maracatu』
フレディー・ハバード、ボビー・ハッチャーソン、アンドリュー・ヒル、ウェイン・ショーター、マッコイ・タイナーらがブルーノートに残した名盤に携わっていたベタラン・ドラマーがブルーノートに復帰。ドン・ウォズにインタビューしたときに「ジョー・チェンバースの新作を出すんだ」と嬉しそうに話していたのを思い出すが、本作を聴けばドン・ウォズがそこまで喜んだ理由がわかるというもの。ジョーは新主流派やスピリチュアルジャズ系の作品で知られるドラマーだが、職人的な技術だけでなく、作曲家志向もあり、リーダー作もリリースしていただけに本作もただのノスタルジックなジャズ・アルバムではない。ドラムだけでなく、ヴィブラフォンも叩き、作曲もする彼のセンスがいかんなく発揮されていて、新主流派にも通じるようなひんやりしたサウンドと空間性を生み出しつつ、そこにブラジル北東部のリズムのマラカトゥを取り入れてみたりと超意欲的。かと思えば、ボビー・ハッチャーソン、ウェイン・ショーター、ホレス・シルヴァーを現在のバンドで解釈してみたり。近年のレジェンドの新録の中でも特にお勧めしたい良作です。
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Ralph Peterson 『Raise Up Off Me』
2021年、惜しくも亡くなってしまった名ドラマーのラルフ・ピーターソンの遺作。80~90年代のブランフォード・マルサリスやテレンス・ブランチャードとの録音や、ブルーノートからの諸作などで知られ、ジェフ・ワッツらとともにシーンをけん引していたのがラルフ・ピーターソン。アート・ブレイキーがフックアップした最後の世代でもあることからもわかるように、表面的にはハードバップに聴こえるようなオーセンティックな衣をまといながらも、その中身にはフュージョンも含めた80年代以降の進化を織り込んだサウンドを聴かせていた。遺作でもパワフルさやラテンやブラジル、アフリカのリズムを取りいれた複雑さが聴こえてくる。スタンダード「Bouncing with Bud」がつんのめりそうなリズムになっているあたりは実にラルフ・ピーターソンらしい。(客演するといちいちいいパフォーマンスをするのでゲスト参加をまめにチェックしたい)若手のトップ・ジャズ・ヴォーカリストのジャズメイア・ホーンが歌う「Naima」も素晴らしい。 “ジャズが聴きたい”と思ったときに手に取りたくなる良作なのでぜひ聴いてもらいたい逸品。