2人をどう思っているかは、「今は」何も言えない
──僕は〈RABBIT STAR ★ TOUR〉のZepp Shinjukuでのファイナル公演での詩羽さんのMCにすごく衝撃を受けて、芯のある言葉を綴るアーティストだなと感じたんですよ。強いメッセージを伝えるのは、なにか理由があるんでしょうか?
詩羽 : この仕事は自分の伝えるべきことを伝えられる立場だし、水曜日のカンパネラが有名になればなるほど、言葉の届く範囲がどんどん広くなっていくなと思っていて。だから、この立場を使わないともったいないし、このスタイルをしている自分だからこそ言えることはしっかり伝えていますね。
──詩羽さんからは「自分にしっかり自信を持って生きてほしい」というメッセージを伝えようとしているのを感じます。
詩羽 : そうですね。でも「自信をもちなさい」とまでは言えないですね。自分が伝えられるのは「自分のことを好きになれたらいいよね」くらいです。私のことを話しても、「そんな簡単にいかねえよ」とか、「人生っていうのはやっぱうまくいかない」と思うでしょうし。でも同時に、「私はあんたたちのこと大好きだよ」というのを1番伝えたい。「好きになろうぜ!」みたいなパワフルさじゃなくて、「誰か1人でもあんたのことを好きな人がいるんだよ」というのを1番に伝えていきたいです。
──詩羽さんのマインドが変化したなと思う出来事はありますか。
詩羽 : 友達ができたことですね。それが自分の人生では1番ありえなかったことなんですよ。例えばドラマ(『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』)に出たことで友達ができたり、最近はミュージシャンの友達もできたりして。友達ができてからは、シンプルに明るくなりました。
──ドラマや映画への出演といった、音楽以外の活動からの影響やマインドの変化はありましたか?
詩羽 : ドラマは撮影期間が4ヶ月あったんですけど、スケジュールが変則的であんまりツアーとかできていなかったんです。その時期に初めて「音楽は楽しいな」とか、「もっとライブしたいな」とか、音楽というものの大切さにも気づきました。
──演技のお仕事やバラエティー番組にも出演されていますが、今後も音楽が活動の軸になっていくんですか?
詩羽 : そうですね。ドラマの撮影期間に音楽が好きだというのは思い知ったので、軸はずっと音楽にあるんじゃないかなと思います。そう思いつつも、小さい頃から見てきた映画やドラマの世界には、その映像や物語で人生を変えることもたくさんあると思うんです。そういう場所でも自分が何かに影響を与えられる立場でありたいなと思いますね。
──詩羽さんは何のためにステージに立って、歌って、踊っているんでしょう?
詩羽 : 私と同じ経験をする人を私は減らしたいなと思っています。自分みたいにごちゃごちゃした環境で生きて、ズブズブに落ちてしまう人を少しでも救うためには、みんなに「好きだよ」と言うのが1番早いのかなと。みんなに「好き」って伝えるために、今はステージに立っています。
──なるほど。詩羽さんにとって、ケンモチさん、Dir.Fさんのふたりはどういう存在なんですか?
詩羽 : どういう存在かは、正直いまはわからないですね。基本、私は人に心開かないタイプなので。年が離れていれば離れているほど警戒する時間が長いですし。
──エッセイのなかでも、おふたりがどういう存在なのかぼやかされていますね。
詩羽 : ぼやかしていますね。それより先は、私としては「勝手に想像するな」って言いたいんですよね。エッセイでは、あと書きで、「他人のことなんてどうせ分かんないから」と記しているんですよ。自分が水曜日のカンパネラとして10年活動したとして、その10年経ったタイミングで、改めて「水曜日のカンパネラ編」を書くべきなのかなと思っていて。逆に10年経たないと、その時の感情とかは明確に分かんないと思うんですよ。だからこそ、2人をどう思っているかは、「今は」何も言えないです。
ケンモチ : わー! 気が引き締まりますね。
