はじめて「自分自身を表現できている」と感じたのがライブ配信
──それだけドラムプレイに熱量の高い鈴木さんが、シンガーとしての活動もはじめたのはなぜですか。
配信と出会ったからですね。いままでドラムやダンスを通して表現と向き合ってきましたが、人生のなかではじめて「自分自身を表現できている」と感じたのがライブ配信だったんです。ドラマーとしてステージに上がっているときから「なんかちげえんだよ。もっと言いたいことがあるのに、スネアの音じゃ伝わらねえ……」と思っている節があって。自分を表現しきるうえで、ツールとして足りない感覚があったんですよね。でも、ライブ配信ではOBSを使って見せたいものを見せられるし、ドラムや言葉で伝えることができる。そうなったときに、言葉が溢れ出てきたんです。
──配信を続けていくなかで「歌いたい」と思うようになっていったと。
そうですね。それまでは、歌があまり上手くないのを理由に「俺には無理なんだな」と諦めて、気持ちに蓋をしていたような気がします。ドラムがあるし、あえて自分が歌のフィールドで戦う必要はないと思っちゃっていました。日常でも「できないことを探すんじゃなくて、できることで戦おうぜ」とか言っていましたし。いま思えば、できないことへ言いわけしたいたような気もします。当時の自分に会えるなら「本当に今の状態で想いが全部伝わっているのか。それだといつか天井がくるんじゃないか」と声をかけたいですね。
──考え方が変わったということは、天井が来た感覚があったんですか。
というよりも、足りなさを感じました。表現したいことがあるのに、メロディーがないと言いたいことを言えないような感覚があって。だから、歌えるようになれば伝えられることが広がるような気がしたんです。どちらかというといまは「生きることは挑戦」というマインド。やりたいけどできないことは、絶対できるようにならなきゃダメじゃねと思っています。今回リリースした「Filter」も以前の僕だったらできなかったと思いますし。
──今回の“Filter”は、どのような楽曲でしょうか。
同じ「おめでとう」という言葉でも、誰を通して聞くかによって感じ方が違うのは、フィルターがあるからだと僕は思っているんです。一緒の時間を過ごし築いてきた歴史が、ありきたりな言葉を特別なものにするフィルターになっていくんだなって。僕の本心というか、思ったことを書いた曲が“Filter”です。
──歌詞はスムーズに書けましたか。
実は一度、書き直しているんですよ。1年半前の時点で曲は出来上がっていて、レコーディングも終わっていたんですけど、なんか気に食わなかったのでリリースせずにいたんです。その曲を今回のイベントで引っ張りだし、伝えきれていなかったところには言葉を補完して完全版に作り直しました。歌詞は変わっていますが、表現したかった想いは当時と変わりません。
──気に入っているフレーズをしいてあげるとしたらどこでしょうか。
1番と2番のAメロは、けっこう言いたいことを言っているかも。配信ってやるときはひとりなので、「俺しか頑張ってねえじゃん」と思ってしまいそうになることもあるんですよ。でも、画面の向こうには一緒に頑張ってくれている人がいると気づけて「ひとりじゃないんだな」と心から思えたときに、ここの歌詞が出てきたんです。ひとりで夢を見ていたつもりになっていたけど、そうじゃなかったなって。あと、最後の“誰の為に生きて”からの歌詞もポイントですね。これは「この曲は僕と君だけのものなんだよ」と伝えたかったので、足した部分になります。
