聴いてもらいたい作品を最高の音質で作って、それを買ってもらう
──これまでのTHE COLLECTORSライヴ作品にはなかった、活動指針のような太い意志の強さが感じられますし、過去、頻繁にやってきたマンスリー、ウィークリーのような定期ライヴとは明らかに位置付けが違うと思います。
加藤:まあ、でも実際はコロナがあったっていうのもすごく大きいとは思う。1本1本のライヴがものすごく重要になってきたし、本当に数もできないなかでのライヴでしょ? だったらそこでやったことを記録として、みんなに売っていきたいっていう気持ちに改めてなったし、この3年でライブやアルバム制作の考え方も変わったしね。だって、ただライヴ音源を出すだけだったらすぐ飽きられるっていうのがわかったし、長く聴いてもらうためにはひと手間もふた手間もかけなきゃいけない。それは音質もそうだし、良いライブをやらなきゃだし。俺のようにダウンロードしてCDに焼く人のことも考えないといけない。
──つまり、ジャケットも毎回変える。
加藤:もちろん。もっと言えば、それこそこのOTOTOYとかでハイレゾでダウンロードしてCD作って楽しむ人のために、裏ジャケまで作って、コロムビアのサイトからダウンロードできるようにもしてるよ。あとは、それぞれハンドメイドでプリントアウトしてCDにしてケースに入れて棚に並べてもいい。そうやってコレクションして聴きたいって人は絶対にいると思う。コレクターズだからね。
──私はオビがほしいです。
加藤:オビね!(笑) そこまでは作らないけど、でも、そういう気持ちの人っているよね。俺もさっき言ったポップ・リーヴァイもそうだし、Amazonプライムで観た『デイジー・ジョーンズ・アンド・ザ・シックスがマジで最高だった頃』のサントラがすげえおもしろくてさ、あれを輸入盤のCDで買えばいいんだけど、わざわざダウンロード・サイトで買って、CDに焼いて、自分だけのハンドメイドCDを作ったの(笑)。だから、今回のTHE COLLECTORSのライヴ盤も、実は盤面のデザインもできればしてあげたいと思ってて。で、自由にプリントアウトして自分だけのCDを作ってほしい。楽しいと思うんだよね、そういうのって。インクジェットのプリンターを持ってる人は、楽しいからこれ作ってみなって。これを今回だけじゃなく、12ヶ月分やるの。共通のエンジニアが全部やる。小林くんと作り上げる。それで彼もきっと成長していくだろうし、俺たちにとっても挑戦になる。どこまで自分たちのライヴの音をどう理想に近づけていけるかってね。
──このアイディアはそもそも2023年のマンスリー・ライヴをはじめる前からあったのですか?
加藤:有料映像配信は決めてた。でも、年々CDが売れなくなる時代にこれだけの労力をかけて配信するんだからってことで、1月にこの企画がはじまった瞬間、コロムビアに相談して、いい音で録るんだからせめて音源だけでも販売したい、足を運べなかった人たちのためにも実験的にとにかくやってみたいっていう話をしたの。もともとTHE COLLECTORSは最初からいい楽器、いい機材、ヴィンテージの高いものを使ってきたし、ライヴでのマイクとかもこだわっていたからそこはもう自信満々なんだよ。ダウンロード販売するための録音で改めて変える必要なんてなかった。録音部分での記録の部分としては、小林くんが年々アップデートしていて、いい音質で録音できるようになってきているというのも大きかったね。2018年にもマンスリー・ライヴをやってるじゃない? その時もやっぱり12ヶ月録音するってことで予算がかかっちゃうってことで、最初は自分が持っていた8トラックのレコーダーで3ヶ月分を取ったの。その時点で44.1kの16bit……いわゆるCDと同じ音質だったの。でも、これじゃやっぱりトラック数も足らないよねってなって、あの時は4月以降に16トラックのレコーダーを自分で買った。48kの24bitまで取れるから音質的には全然十分なんだよね。そんなふうに、俺らの環境自体、なんだかんだでずっとアップデートしてるんだよ、レコーディング機材もね。いまはもうやろうと思えば48kどころか96k……ハイレゾの状態で録音できるんだけども、クラシックじゃないんだからそこまでやる必要はないだろうと思ってね(笑)。まあ、そうやって俺たちも少しずつ少しずつ進化してるのよ。
もちろん、これを12ヶ月続けて、どういう結果がでるかわからないよ。楽しみだけどね。それで自分たちが考えているような結果にならないかもしれない。でも、そうならなかったからって俺が諦めるわけないじゃん! 聴いてもらいたい作品を最高の音質で作って、それを買ってもらう、そのシステムがちゃんと戻ってくるまでは続けるし、色々試してみたいと思ってるよ。

──すでに4ヶ月終了していますが(インタビューは4月下旬に行われた)、(ライヴでの)曲順、曲目は全然違うものがこれからも用意されるのですか。
加藤:もちろん。全部違う。同じことはやらない。全部一回限り。毎回が初日。もう、まんべんなくレア曲があるよ。こんな曲もやるんだ! っていうレア曲のオンパレード。実際『ジューシーマーマレード』の曲が中心なのは1月で終わり。ほら、岡村さん(筆者)、“ジェットパイロットの夢”とか聴きたいでしょ?(笑)
──聴きたいですね(笑)。
加藤:選曲はいつものように(古市)コータロー(ギタリスト)がやってるんだけどさ。すごいのばかり選んでくるからリハも大変。しごきのコータロー。でも、よくもまあこんなレアな曲あったもんだって、そんな選曲ばかりだから聴いてて楽しいと思うよ。この前は「金時計」(“きみの素敵な金時計“)もやったよ。
──それも『COLLECTOR NUMBER.5』(1991年)の曲ですね。それであれば私は“二人“を聴いてみたいです。
加藤:“二人“か~!(笑) あれはたぶんいままで一度もライヴでやってない。だって語りの曲なんだもん(笑)。なんかさ、そういうとんでもない曲も聴けるという意味でもこのマンスリーはすごくいい企画だなって思う。俺なんか最後に“僕はコレクター“で終わるのにもちょっと飽きたなって思ってるくらいだからね。たださ、なんとなくローリング・ストーンズが“ジャンピン・ジャック・フラッシュ“やらないとソンした気分になるようなのって、あるじゃない?(笑)
──そうですね。でも、今回のライヴ盤でも「コレクター」の最後の方でコータローくんが“カーニバルがやって来る“のフレーズを挿入していたりして、そうやってアレンジを変えていくのが確認できるのは楽しいですね。
加藤:自分では全然いいと思ってなかった曲も改めていい曲だなって気づくこともあるしね。ほら、詩野ちゃんは前から“スイート・シンディ“がいいって言ってたじゃん? それ、最初言われても全然わからなかったんだよね。こんな曲が? って(笑)。あれはロンドン・レコーディング中に間に合わせで作った曲だしさ。でも、言われて改めてライヴでやってみたら、いいじゃんこれ! って気づくわけで。だから最近はわりとやってる。今回の1月のライヴ・アルバムでもやってるでしょ?

──これだけ長く活動していて、作品数も多いと、見えなかったことに後から気づくこともありますよ。リリース当時に賛否両論だった“Cash & Model Gun”も既にやったそうですね。
加藤:そう! あれもねえ、もうずっとやってなかった曲。あの曲を作った時のことはいまも忘れてないよ。売れる曲を作れ、「世界を止めて」みたいな曲がほしいってレコード会社にずっと言われててさ、こっちも四苦八苦だよね。で、これからTHE COLLECTORSどうする? ってミーティングの時に、「もうお前ら売れないから売れる曲書かなくていい」って言われたの(笑)。いっそ、フランク・ザッパみたいにマニアックなこと、変なことやっていいって。なんかさ、親に見放された出来の悪い息子みたいな気持ちになって寂しかったよ(笑)。でも、それならじゃあ好きなことやりますって感じで書いたのがあの曲。俺、ザッパにはなれないし、なりたくないし、でも、好きなことやっていいなら……って感じでね。しかも、あれ、銀行強盗の歌なんだよ(笑)。でも、すっげえカッコいい曲なんだよね。
──あと、今回改めて気づいたのは、加藤さんはダークな曲を基本的に書くんだということですね。もともと決して明るい人じゃないですが、どんなにハッピーなムードの曲でもどんなにアッパーな曲でも翳りある重い目線が顔を出す。ライヴ・アルバムだと顔や雰囲気が見えない分、加藤さんのそうしたソングライターとしてのダークサイドが感じられますね。それが年々際立ってきているような気がして、個人的にはとても嬉しいです。
加藤:俺、ライヴとかだとサービス精神旺盛で楽しませちゃうしね。エンターテイナーってなっちゃうから。でも、やっぱそこが今ひとつお茶の間に浸透していかない理由なのかね(笑)。本当はさ、テレビや映画のタイアップとかやりたいんだよ。これ有名な話なんだけど、漫画『名探偵コナン』の作者は実はTHE COLLECTORSが大好きで、“愛ある世界“(1993年『UFO CLUV』収録)を主題歌にしたいって言ってくれてたのに、結局かなわなかった。闇の勢力がTHE COLLECTORSのブレイクを阻んでいるんだよ(笑)。でもね、それでも俺は諦めない。今年はもうこのマンスリー・ライヴと音源リリースをしっかりやって、しっかり売って、来年にはアルバムを出すよ、26枚目のね。

編集:梶野有希
アンコール2曲も収録した全19曲入りのライヴ盤!
THE COLLECTORS の過去作はこちらから
ライヴ情報
〈THE COLLECTORS CLUB QUATTRO MONTHLY LIVE 2023〉
【会場】
渋谷CLUB QUATTRO(全公演)
【日程】
2023年1月15日(日)
2023年2月12日(日)
2023年3月12日(日)
2023年4月16日(日)
2023年5月14日(日)
2023年6月11日(日)
2023年7月16日(日)
2023年8月13日(日)
2023年9月10日(日)
2023年10月15日(日)
2023年11月19日(日)
2023年12月10日(日)
【開演 / 開場】
OPEN15:15 START16:00(全公演)
PROFILE : THE COLLECTORS
1986年初頭、THE WHOやPINK FLOYDといったブリティッシュ・ビート・ロックやブリティッシュ・サイケ・ロックに影響を受けた加藤ひさし(Vo.)と古市コータロー (G.)が中心となって結成。
翌87年11月にアルバム『僕はコレクター』でメジャー・デビュー。
91年1月にリズム隊のメンバーチェンジを行ない、小里 誠(B.)と阿部耕作(Dr.)が加入。
2009年よりスタートした加藤ひさし(Vo.)と古市コータロー(G)によるポッドキャスト「池袋交差点24 時」が話題となり、2009年i-Tunesのポッドキャスト番組ベスト25に選出され、現在も大好評配信中。
2014年3月末、ベースの小里 誠が脱退し山森“JEFF”正之が正式に加入。
2016年6月にドラムの阿部耕作が脱退。7/20には日本コロムビアより、92年にリリースされた楽曲「愛ある世界」を多数のミュージシャンにより再レコーディングされ、「愛ある世界 -30th Anniversary Session」として発売される。9/7には30周年記念CD BOX SETとBEST ALBUMが発売。12/7には22枚目のアルバム『Roll Up The Collectors』を発売。
2017年になり、サポートとして参加していたドラマー、古沢”cozi”岳之がメンバーとして正式加入。新生ザ・コレクターズとして、メジャー・デビュー30周年を迎え、2017年3月1日に日本武道館公演を開催。大盛況のうちに終了。日本武道館公演映像作品が6/7に発売され、過去最多の32公演のツアーを行ない、最終日の中野サンプラザホールは即日完売で大盛況のうちに幕を閉じた。
2018年1月より、12ヶ月連続のマンスリー・ライブを渋谷クラブクアトロで開催中で全公演チケットは即日完売。11/7には23枚目となるアルバム『YOUNG MAN ROCK』を発売。初のドキュメンタリー映画『THE COLLECTORS〜さらば青春の新宿JAM〜』が11月から公開され、5ヶ月に及ぶロングランに。その映画のBlu-ray&DVDが2019年6月に、2018年のクアトロマンスリーライブも8月にBlu-ray化された。
2020年、24枚目となるニュー・アルバム『別世界旅行〜A Trip in Any Other World〜』を11/18にリリース。ボーカル加藤ひさしが還暦を迎えるのを記念して11/23に大宮ソニックシティ大ホールにてTHE COLLECTORS. HISASHI KATO 60th BIRTHDAY LIVE SHOW“Happenings 60 Years Time Ago”」が開催された。
2021年6月はバンド結成35周年記念公演を大阪城音楽堂で開催。6〜8月には1年延期となった恒例のクアトロ・マンスリーライブを1日2回公演という形で行ない大阪城音楽堂公演も含めライブを、昨年からスタートさせた有料配信「LIVING ROOM LIVE SHOW」で随時、期間限定で公開している。そんな中、11月には35周年記念DVD BOX「Filmography」をリリース。発売記念ツアー「It’s mod mod world tour」を11月より2月まで敢行。
そして35周年記念公演を2022年3月13日(日)日本武道館で開催し圧倒的なステージングでファンを魅了。そのライブ映像作品が同年7/20にリリースされた。7月から8月にかけて東名阪を廻るTHE COLLECTORS 35th anniversary live action “Living Four Kicks 2022”を開催。11月23日には、通算25枚目のオリジナル・アルバム「ジューシーマーマレード」をリリース。同日より全国8都市を廻る「THE COLLECTORS Live Tour 2022 “Lick the marmalade!」を開催する。また、2023年には2度目となる、12ヶ月連続のクアトロ・マンスリーライブ、THE COLLECTORS QUATTRO MONTHLY LIVE 2023「日曜日が待ち遠しい!」を渋谷CLUB QUATTROで開催中。
■公式Twitter:https://twitter.com/info_collectors
■公式HP:https://thecollectors.jp/