前進したいと思うことで出来ることが沢山ある
──なるほど。“走れ!“に関してはいかがですか?
近藤:この曲は元々、ドラムの(谷田)七海ちゃんが加入する前に、メンバー同士でほとんどコミュニケーションを取らずにそのままレコーディングした楽曲でした。でも、ライヴでもよくやる良い曲だし、もっとちゃんとアレンジを施したり、ヴォーカルとしてももっと詰めた形で録り直したりしたいということで、今回収録しました。この曲に込めた死生観については、コロナ禍中に友人の親族が亡くなってしまった時に、その友人にかける言葉が見つからなかったという実体験が由来しているものです。この気持ちは絶対に残しておかなければいけないと思って、作りました。
──曲順的にも、インスト楽曲“in cider”を挟みつつ、“走れ!“の後に「走り出した」というフレーズからはじまる“アウトサイダー“が続くという流れが美しいと思いました。
近藤:これは偶然で。むしろ、タイトルの“走れ“と歌詞の「走り出した」が被ったので、ここから先の歌詞では走るの禁止になりました(笑)。
──ははは! 今後は、書けても早歩きに留まるんでしょうね(笑)。“アウトサイダー“と”ファム・ファタール“は、2曲でひとつの物語が描かれていますが、先に第一部として“ファム・ファタ―ル“があったからこそできた構成なのでしょうか?
近藤:そうですね。最初に物語を作り上げてから考えついた構成ではありますけど、ストーリーが長くなってしまったので二部作にしようと思って、“アウトサイダー“を作りました。物語を書くというのも、作詞の合間に気分転換がてらやっていた作業でしたけど、“アウトサイダー“が出来るまでに結構時間がかかりましたね。“ファム・ファタ―ル“のなかで「月が綺麗」の回答を「死んでもいいわ」として、“アウトサイダー“でその女性が居なくなる描写を描いて、物語を完結させるという構成になっています。自己満足ではありますけど、歌っている時も楽しいです。
──でも、物語が歌詞になっても、ちゃんとストーリーが分かるのがいいですよね。表現が抽象的になり過ぎていないので、聴き手がイメージしやすい言葉選びをしているといいますか。
近藤:ああ、でも確かに、聴いた時に想像してほしいという気持ちはめちゃくちゃありますね。だけど、本音としては、自分だけ分かればいいという想いもありますし、だからこそあえて「こういう歌詞です」と明示しないようにしています。今回はブログで自分が作ったストーリーを公開しましたけど、それもひとつの考え方として受け取ってもらえたらいいなという気持ちでアップしました。
──作者の想いを汲んだ上で広がるものもありますからね。その点で言うと、私は“アウトサイダー“と”ファム・ファタール“に続く、“夜汽車に乗って“までを含めて、三部作として聴いていました。ふたりが別れた後に、主人公が続きを夢見ている様子を想像したんです。
近藤:その気持ち、とても分かります。僕もその3曲はどこか繋がっているように感じました。全く意図せずに繋がったイメージですけど。“夜汽車に乗って“は、僕自身がこの曲を作っていた時期によく東京へ行っていたことが反映されている曲です。名古屋の人にとっては、東京って都会だし、勝負心を掻き立てられる場所なんですよね。なので、そういう気持ちをリアルな面として描きつつ、小説家をイメージした幻想を描くことで対比を表す、という作り方をしました。やっぱりそういう繋がりを持たせた作詞の仕方っておもしろいと思いましたね。
──いままでの作詞に於ける姿勢とは、また違った書き方だったんですか?
近藤:そうですね。いままでは、自分が言われたいことを自分に向けて書いていました。でもいま、自分が聴きたい曲を書こうと思っています。
──メロディの作り方や、アレンジについての変化はありました?
近藤:ありましたね。“アウトサイダー“のAメロは、ピアノを練習しながら作ってみました。その挑戦というのも、今作のコンセプトにある「前進」というキーワードがあったからこそやってみたことではあります。まだ全然弾けないですけどね。

──そうした前進を踏まえつつも、“ぞうのうた“や、CDに限定収録される“ハイスクールジュニアのテーマ“は、mollyの根底にある名古屋愛や、遊び心が反映されている楽曲ですよね。
近藤:そうですね。“ハイスクールジュニアのテーマ“に関しては、歌詞は人生最短で出来ました(笑)。この曲は打ち込みにも挑戦しつつ、ホテルのベッドを占領した、メンバーのハイスクール・ジュニアやますけ(Dr)への仕返しという想いが込められています(笑)。これは本当に聴いてほしい! 聴かれれば聴かれるほど、アイツが恥ずかしい気持ちになるので(笑)。
──ははは!配信だけでなく、多くの人にCDも買ってもらいたいですね(笑)。いま改めて振り返ってみて、宣言通り前進できた実感はありますか?
近藤:今作を作ったことで、ここがゴールという訳ではなく、もっと新しいことにも挑戦しつつ、進んでいきたいなと思えました。前進したいと思うことで出来ることが沢山あるということに気付けたので、次はもっと攻めてみたいと思っています。躊躇していた訳ではないですけど、実際にやってみたことで楽しさに気付けましたね。
──12月にはリリースツアーもありますし、楽しみですね。
近藤:はい! 名古屋公演はクリスマス・イヴですし。いままでのmollyらしさも忘れずに、それでいて色々な挑戦を詰め込んだライヴにしたいと思っているので、頑張ります!
編集:梶野有希
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LIVE INFORMATION
molly セカンド・ミニ・アルバム『メメント・モリ』リリース・ツアー〈少女はイヤホンから幻を聴く〉
12月10日 下北沢 daisy bar
12月18日 心斎橋 Pangea
12月24日 新栄 RAD SEVEN
全公演 開場17:30/開演17:30
※対バン、後日発表
molly『メメント・モリ』発売記念インストアイベント
日付:2022年11月27日 時間:17時 開演 場所:タワーレコード名古屋パルコ店
PROFILE : molly
日本の中心、地元・名古屋をこよなく愛する4人組バンド。2019年春に活動スタート。メンバーチェンジを経て、2021年4月ドラマー谷田が加入し現体制となったが、2022年8月末でオリジナルメンバー有坂の脱退を発表。今後は新たにサポートを迎えて活動を継続していく。感情がそのまま溶け込んだ繊細な歌声と、瞬間を謳歌するエネルギーで聴くものを惹き込むライブが魅力。幸せな距離感で側にいてくれるバンド。名古屋のライブハウスを中心に果敢に活動中。
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